イヌホオズキ類の調査結果が既存の公表データと一致しないところがあったため、独自の検索表を作成した。この中に新しく、ダグラスイヌホオズキ※とムラサキイヌホオズキも加えた。実測データに加え、神奈川県植物誌のデータ、The
Jepson Manualのデータ、CDFA(CALIFORNIA DEPARTMENT OF FOOD AND AGRICULTURE)のデータ、SEInetによって提供されているCANOTIA(An
Arizona journal publishing botanical and mycological papers )データを考慮した。Solanum
douglasii(ダグラスイヌホオズキ)はオンタリオ州発信のontarioweeds.comのデータも参考にしている。
この検索表以外にテリミノイヌホオズキの垂れ実型で、球状顆粒が1〜4(5)個のものがあるものと考えられる。
特徴
1 イヌホオズキ
@ 花冠裂片の幅が広く、切れ込みが浅い、花もやや大きい。
A 果実に光沢がなく、やや縦長。フケ状班紋は少ない。
B 果実中の種子が少なく、種子が大きい。長さ約2o。
C 球状顆粒がない。
2 オオイヌホオズキ
@ 花が大きいものが混ざり、花冠裂片の基部の幅は広くない。
A 果実の光沢が少なく、フケ状班紋は少ない。大きい果実は横長。
B 果実中の種子が多く、種子が小さい。長さ約1.3o。
C 球状顆粒が多い。4〜12個。
3 ダグラスイヌホオズキ
オオイヌホオズキに似る。
@ 花冠の中心が褐色を帯びることがある。
A 球状顆粒が0〜4個(0〜10個)
4 アメリカイヌホオズキ
@ 花序の花数が1〜5個(2〜4個が多い)。花が淡紫色を帯びることが多い。
A 若草を除き、茎や葉は紫色を帯びず、葉の厚さが薄い。
B 果実の光沢が少なく、フケ状班紋が少ない。大きい果実は横長。
C 球状顆粒が4〜8個。
5 ムラサキイヌホオズキ
@ 葉や茎が紫色を帯びる。
A 花序の花数が2〜6個(3〜5個が多い)。花が淡紫色を帯びることが多い。
B 果実が大きく、横長、やや光沢があり、フケ状班紋がやや多い。
C 球状顆粒2〜6個。
6 テリミノイヌホオズキ
@ 果実の光沢が強く、明瞭な横長。フケ状班紋が多い。
A 萼片が基部から捲れ上がる。
B 球状顆粒がほとんどない。あっても2(5)個以下。
6−1 カンザシイヌホオズキ型
@ 小果柄が上向きに立つ。
A 種子の色がほぼ白色。
6−2 垂れ実型、葯が褐色を帯びる
@ 小果柄が垂れ下がる。
A 種子の色がほぼ白色。
B 葯が褐色を帯びる。
6−3 垂れ実型、種子が淡褐色
@ 小果柄が垂れ下がる。
A 種子の色が淡褐色。
B 果実の光沢が少ないことがある。
表6 イヌホオズキの検索表
| |
イヌホオズキ |
オオイヌホオズキ |
ダグラスイヌホオズキ※
Solanum douglasii |
アメリカイヌホオズキ |
ムラサキイヌホオズキ |
テリミノイヌホオズキ |
| カンザシイヌホオズキ型 |
垂れ実型(種子白色) |
垂れ実型(種子淡褐色) |
| 花 |
花序の花 個 |
4〜12 |
3〜 8 |
2〜9 |
1〜 5 |
2〜6 |
3〜12 |
3〜 7(12) |
3〜9(12) |
花
径 |
範囲 o |
4〜14 |
7〜16 |
7〜17(25) |
6〜12(15) |
6〜12 |
4〜12 |
4〜12 |
4〜13 |
| 主 o |
10〜12 |
10〜12 |
10〜14 |
7〜11 |
7〜9 |
7〜9 |
7〜9 |
9〜11 |
花
柱 |
範囲 o |
3〜5 |
3〜5 |
3〜5(7) |
2〜3 |
2〜3 |
1.6〜3(4) |
1.6〜3(4) |
2〜4 |
| 平均 o |
4 |
4 |
4 |
2.5 |
2.2 |
2.1 |
2.3 |
3.2 |
| 葯 |
範囲 o |
1.8〜3 |
2〜3(4) |
2〜3(4) |
1〜2 |
1〜2 |
1〜1.8 |
1〜1.8 |
1〜2.2 |
| 平均 o |
2.2 |
2.5 |
2.6 |
1.5 |
1.4 |
1.3 |
1.4 |
1.7 |
花
粉 |
範囲μm |
35〜41 |
25〜33 |
25〜28 |
27〜33 |
25〜31 |
26〜33 |
29〜33 |
25〜28 |
| 平均μm |
38 |
29 |
27 |
30 |
28 |
29 |
31 |
27 |
果
実 |
楕円性 |
縦長 |
微横長 |
微横長 |
微横長 |
横長 |
横長 |
横長 |
横長 |
| 光沢 |
無 |
有 |
有 |
有 |
強/有 |
強 |
強 |
強/弱 |
| フケ班紋 |
少 |
少 |
少 |
少 |
多 |
多 |
多 |
多 |
果
径 |
範囲 o |
5〜9 |
5〜10 |
5〜9(12) |
5〜9(12) |
6〜9 |
(3)5〜9 |
(5)6〜9 |
5〜10 |
| 平均 o |
8 |
8 |
7 |
7 |
8 |
7 |
8 |
7 |
種
子
数 |
範囲 個 |
15〜60 |
60〜120 |
60〜120 |
60〜120 |
30〜90 |
20〜60(100) |
20〜60(100) |
20〜60(100) |
| 平均 個 |
30 |
80 |
80 |
80 |
50 |
40 |
40 |
40 |
顆
粒
数 |
範囲 個 |
0 |
4〜12 |
0〜5
(0〜10) |
4〜8(15) |
2〜6 |
0〜2 |
0 |
0 |
| 平均 個 |
0 |
9 |
2(3) |
5 |
5 |
0.1 |
0 |
0 |
種
子 |
色 |
淡黄褐 |
淡褐 |
淡褐 |
淡黄褐 |
淡黄褐 |
白 |
白 |
淡褐 |
長
さ |
範囲 o |
1.7〜2.5 |
1〜1.5 |
1〜1.5 |
1〜1.5 |
1.3〜1.8 |
1〜1.8 |
1〜1.8 |
1〜1.8 |
| 平均 o |
2 |
1.3 |
1.3 |
1.4 |
1.6 |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
※花径は花冠が開いた星形の最大径
※果径が6.5o以下の果実は種子数が少なくなる。
※ダグラスイヌホオズキはSolanum douglasiiと思われるものの仮称。
※()は可能性がある範囲。
※ テリミノイヌホオズキにはこの表にあてはまらないものがある。
1
イヌホオズキ Solanum nigrum
The Jepson Manualのデータ、CDFA(CALIFORNIA DEPARTMENT OF FOOD AND AGRICULTURE)
のデータ、カナダのオンタリオ州のデータを考慮すると大きな違いはないと思われる。花柱の長さと葯の長さを修正した。
2
オオイヌホオズキ Solanum nigrescens
メキシコ、パナマなど南アメリカ原産でアメリカ合衆国のフロリダ付近の東南沿岸やハワイに帰化している。神奈川県植物誌のデータ以外にネットでは入手できる情報が少なく、CDFAの参照にあるMalezas
de Mexico (on-line resource)のデータがあった。(花柄の長さ:約10o、萼の長さ:1〜3o、花冠の長さ:3〜10o、葯の長さ:2〜4o、花糸:0.5〜2o、果実の直径:4.5〜7o、種子の長さ:1〜1.5o)。この解説ではSolanum
douglasiiを同義語としているのが気にかかるが、葯の長さと種子の長さの参考にした。ダグラスイヌホオズキの中に含まれる可能性もある。
3
ダグラスヌホオズキ Solanum douglasii (
ダグラスヌホオズキ詳細参照)
オオイヌホオズキと思って採取したものの中に球状顆粒が少ないものがあり、あっても4個以下であり、無いものもある。球状顆粒以外のデータはほとんどオオイヌホオズキと一致する。これがアメリカ合州国の西南部やメキシコなど中米に分布する
Solanum douglasii らしいことがわかった。Douglas' nightshadeと呼ばれているため、ひとまず、ダグラスヌホオズキと呼ぶことにする。球状顆粒数は0〜5個であるが、0〜10個の可能性も高い。
4
アメリカイヌホオズキ Solanum ptycanthum
カリフォルニアにはアメリカイヌホオズキはないため、オンタリオ州のontarioweeds.comデータも参考にした。アメリカイヌホオズキの球状顆粒は最大が6個であったが、過去に8個のものも確認している。花序の花数は場所によって5個が混じるものが見られた。ontarioweedsのデータは球状顆粒数も葯の長さもよく一致している。種子がやや大きいため、範囲を修正している。ただし、Virginia
Tech Weed のデータでは果実が大きく、球状顆粒数の最大は15個となっており、数が多い可能性もある。
5
ムラサキイヌホオズキ Solanum memphiticum (
ムラサキイヌホオズキ詳細参照)
花はアメリカイヌホオズキに似て淡紫色を帯び、全体の外観はアメリカイヌホオズキに近い。果実はテリミノホオズキのように早く熟さないが、大きくて光沢が強い。果実の種子数と球状顆粒数が両者の中間である。球状顆粒数は5又は6個が多いが、ときおり、2〜4個のものが混じる。種子は色がアメリカイヌホオズキに似て、大きさや形がテリミノホオズキに近い。これがムラサキイヌホオズキと呼ばれているものと推測される。花序の花数は3〜5個がほとんどである。Solanum
memphiticumと推定されているが、Solanum memphiticumの詳細な内容が不明である。Solanum memphiticumではない可能性も高い。
5 テリミノイヌホオズキ Solanum americanum (
テリミノイヌホオズキ参照)
テリミノイヌホオズキは
垂れ実型と
カンザシイヌホオズキ型が確認報告されており、調査結果では両者とも球状顆粒が全くないものが多く、カンザシイヌホオズキ型に1〜2個の球状顆粒を稀に含むものがあった。神奈川植物誌のデータに加え、The
Jepson ManualのデータとCDFA(CALIFORNIA DEPARTMENT OF FOOD AND AGRICULTURE) のデータを比較したところ、CDFAのデータに最も近かった。カンザシイヌホオズキ型と垂れ実型に分類しているが、種子が白色のものと、種子の色がやや濃い淡褐色のものが明瞭に分けられる。