テリミノイヌホオズキ 
[英名] American black nightshade
三河の野草
[学名] Solanum americanum Mill.
Solanum nodiflorum Jacq
Solanum photeinocarpum Nakam. et Odash.
[ナス科 Solanaceae  ナス属]
 テリミノイヌホオズキは1936年に台湾産のSolanum photeinocarpumにつけられた名であり、その後、 Solanum americanumと同じものとされた。北アメリカでも混同があり、Solanum nodiflorumをSolanum americanumとし、それまでSolanum americanumとしていたものをSolanum ptycanthumとしている。現在、日本のテリミノイヌホオズキはSolanum americanumとするのが普通である。
 Solanum americanumは4タイプあるともいわれ、日本でテリミノイヌホオズキとされている植物には明らかに複数の分類群が含まれ、垂れ実型(球状顆粒有り・無し)とカンザシイヌホオズキ型(球状顆粒無し)の2タイプが確認報告されている。Solanum americanum のデータは文献によりかなり異なり、学名の混乱もあり、古いものは信頼できない。
 神奈川植物誌のデータに加え、The Jepson ManualのデータとCDFA(CALIFORNIA DEPARTMENT OF FOOD AND AGRICULTURE) のデータを比較した。CDFAの花径は花が開いたときの主なデータである。どれが正しいのかわからなくなるが、変化が多いと解釈し、3データが含まれる範囲をテリミノイヌホオズキ(Solanum americanum )のデータとして表に示した。
 カンザシイヌホオズキ型に球状顆粒を1〜2個もつ果実が稀に混じることがあった。現在までの調査では垂れ実型に球状顆粒のあるものが見つかっていない。調査結果は花粉粒の長さを除いて、若干範囲から外れるものがあるが、ほぼ既存データ範囲に近かった。

テリミノイヌホオズキ
神奈川県植物誌
S.americanum テリミノイヌホオズキ 実測値
The Jepson Manual CDFA カンザシイヌホオズキ型 垂れ実型・種子白色 垂れ実型・種子淡褐色
葉の長さ p 2〜15 2〜15  
花序の花 個 5〜12 4〜10 4〜12 3〜11 3〜7 3〜9 3〜11
花径 o 4〜6 3〜6 4〜12 3〜12 4.5〜12 7〜10 6〜13 4.5〜13
花柱 o 2〜3 2.5〜4 2〜4 1.6〜2.9 1.9〜2.5 2.9〜3.7 1.6〜3.7
葯  o 1〜1.5 1.4〜2.2 1〜1.8 1〜2.2 1.1〜1.6 1.3〜1.5 1.6〜1.9 1.1〜1.9
花粉粒 μm 17〜23 17〜23 26〜33 29〜33   25〜28 25〜33 
果実光沢 強〜弱
果径 o 4〜7 5〜8 5〜8 4〜8 3〜8.5 6〜9 5〜10 310
種子数 個 30〜50 50〜100 30〜100 30〜67 26〜59 27〜88 26〜88
種子長 o 約1.5 1〜1.5 1〜1.8 1〜1.8 1.2〜1.6 1.3〜1.7 1.2〜1.8 1.2〜1.8
種子の色 黄〜ほぼ白 黄〜ほぼ白 淡褐 淡褐〜白
球状顆粒 個 0〜2 0〜5 0〜5 0〜2 0 0 0〜2

【テリミノイヌホオズキの特徴】
 テリミノイヌホオズキの花冠は日陰や低温の環境では淡紫色になりやすいとされている。果実は熟すと黒色 glossy black 又は brownish-black になり光沢があり、熟す前は果実の表面にフケ状の斑紋 white flecks が多い。果実の萼片が基部から顕著に反曲する。果実中の球状顆粒sclerotic granulesは0〜5個。種子は幅1.3o以下、黄色〜ほぼ白色。

【調査結果】
 果実の光沢、フケ状班紋、球状顆粒によりテリミノイヌホオズキと判断してきたが、特徴などは以下のとおりであり、 花序の形、葯の色、果実の光沢、球状顆粒数、種子の色の違いからテリミノイヌホオズキは4タイプに分けられる。他のイヌホオズキ類との比較はイヌホオズキ類の比較表にまとめた。

草形
 茎は直立するのが普通であるが、倒伏することも多く、カンザシイヌホオズキ型と垂れ実型が並んで生えていることも多い。
花序
 花序の小果柄が立つものをカンザシイヌホオズキ型、垂れ下がるのを垂れ実型としている。しかし、中間的なものも見られ、一部の小果柄だけが垂れ下がるものは区別が難しいため、種子の色が白色のものはカンザシイヌホオズキ型に含めた。

 蕾の萼片は花によって大きさや形が変化し、萼片の基部の幅が狭く、基部の間が離れるものと、萼片の基部が幅広くて基部の間が近いものの2種の傾向はあるものの、判別に使うのは難しい。果実の萼片は基部から顕著に反曲する。
果実
カンザシイヌホオズキ型も垂れ実型も果実に光沢の少ないものが見られ、垂れ実型は光沢の弱いものがしばしば見られる。果実はやや横幅が広く、縦幅と高さが短い楕円状になる。フケ状班紋は明らかに多く、子房に斑点が見えるものがある。
種子
 種子の色は白色と淡褐色のものがある。完熟した果実では種子の紫色が強くやや判りにくいが、完熟前の緑色の果実の種子では明瞭に差がある。種子の幅はほとんど1.3o以下であるが1.4oのものもある。
球状顆粒
 球状顆粒があるものはほとんど無く、カンザシイヌホオズキ型の果実9個だけに1〜2個が混ざるものがあった。球状顆粒が0〜2個の株の周りを調べたが、外観が同じでも全く球状顆粒がない株が多く、10個の果実中にたった1個、直径0.3oの小さな球状顆粒があっただけの株もあった。それまでの調査で球状顆粒を見落としているおそれも十分ある。球状顆粒以外に際立った差はなく、カンザシイヌホオズキを球状顆粒の有無で区分するのは困難と思われる。

  テリミノイヌホオズキのタイプ別調査結果
  テリミノイヌホオズキ
カンザシイヌホオズキ型(球状顆粒無) カンザシイヌホオズキ型(球状顆粒有) 小計(カンザシイヌホオズキ型) 垂れ実型(種子白色) 垂れ実型(種子淡褐色) 総計
花序の花 個 3〜11 3〜8 3〜11  3〜 7 3〜9 3〜11

範囲 o 4.5〜12 6〜8 4.5〜12  7〜10 6〜13 4.5〜13
平均 o 7.5 7 7.5  8.5 9 8
データ数 95 25 120  24 76 220

範囲 o 1.6〜2.9 1.6〜1.9 1.6〜2.9  1.9〜2.5 2.1〜3.7 1.6〜3.7
平均 o 2.2 1.8 2.1  2.3 3.1 2.5
データ数 16 6  22 11 18 51
範囲 o 1.1〜1.6 1.2〜1.6  1.1〜1.6 1.3〜1.5 1.4〜1.9 1.1〜1.9
平均 o 1.4 1.3 1.3  1.4 1.7 1.5
データ数 35 13 48  29 30 107

範囲μm 26〜33 27〜33  26〜33 29〜33 25〜28 25〜33
平均μm 29 29 29  31 27 29
データ数 20 21 41  10 10 61

楕円性 横長 横長 横長 横長 横長 横長
光沢 強/弱
フケ班紋

範囲 o 3〜8.5 5.5〜8 3〜8.5  6〜9 4.5〜9 3〜9
平均 o 6.5 7 6.5  8 7 7
データ数 78 23 101  15 58 174


範囲 個 (2)30〜67 (10)38〜67  (2)30〜67 (17)26〜59 (7)35〜77 (2)26〜77
平均 個 37 41 38 42 43 40
データ数


範囲 個 0 0〜2 0〜2 0 0 0
平均 個 0 0.5 0.1 0 0 0.1
データ数

白  淡褐 淡褐



範囲 o 1.2〜1.6 1.4〜1.6 1.2〜1.6  1.3〜1.7 1.2〜1.8 1.2〜1.8
平均 o 1.4 1.5 1.5  1.5 1.6 1.5
データ数 91 110 201  111 156 468
※ 果実中の種子数は果実が小さいと明らかに少なくなるため、種子数は果径が7o以上のものを集計した。()内は果実の径が7o未満の全てを含めたとき。

【テリミノイヌホオズキの4タイプ別の特徴】

         テリミノイヌホオズキのタイプ
  テリミノイヌホオズキ
  カンザシイヌホオズキ型 垂れ実型 
  A  B  C D
全形 直立又は倒伏 直立  倒伏 直立又は倒伏
萼片 果実の萼は基部から強く反曲する 
花序の形 小果柄が上向き〜水平、垂れ下がるものが混じる 小果柄が上向き 小果柄が垂れ下がる 小果柄が垂れ下がる
果実の光沢 強、やや弱いことがある
 葯の色  黄色  黄色  褐色を帯びる  黄色
果実の表面 フケ状班紋が明瞭に多数見える
種子の色 白色 白色 白色 淡褐色
球状顆粒  0  0〜2  0 0

【疑問点など】
  1 カンザシイヌホオズキ型と垂れ実型を分ける場合、中間型がある。
  2 果実の光沢は強いものと弱いものがある。
  3 花序はカンザシイヌホオズキ型であるが、果実の光沢が少なく、種子が淡褐色のものが1株だけあった。すぐに枯れてしまい詳細不明。
カンザシイヌホオズキA型 垂れ実D型
カンザシイヌホオズキ型
垂れ実・顆粒無型
 
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