きのこ図鑑
Flora of Mikawa 
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  フクロツルタケ  袋鶴茸
中 国 名 片鳞托柄菇 pian lin tuo bing gu
英  名 American amidella
学  名 Amanita volvata [non (Peck) Lloyd] sensu Hongo
Amanita volvata (Peck) Lloyd
Amanitopsis agglutinata (Berk. et M.A. Curtis) Sacc.
Amanita volvata (Peck) Martin
分  類 坦子菌門 ハラタケ亜門 ハラタケ綱 ハラタケ亜綱 ハラタケ目(Agaricales)
科  属 テングタケ科  Amanitaceae  テングタケ属
 Amanita volvata は北アメリカ東部を基準産地とし、日本のフクロツルタケはこの学名を使用している。北アメリカ東部のものも他種が混同されてきた経過があり、日本のフクロツルタケは北アメリカ東部のAmanita volvata とは異なるものであり、Amanita volvata [non (Peck) Lloyd] sensu Hongo とするのが一般的である。フクロツルタケがシロウロコツルタケAmanita clarisquamosaと混同されていることがあるが、シロウロコツルタケは肉がほとんど変色しない別種である。
 子実体は単生~散生。傘は直5~8㎝、半球形~饅頭形~扁平。背面は粘性がなく、白色、表面に淡茶褐色の粉状~綿くず状の鱗片に覆われ、ときに土褐色の外被膜の残片がつき、古くなると鱗片は灰褐色になる。柄は長さ6~14㎝、幅0.5~1㎝、逆棍棒形、中空、表面は傘と同様であり、つばを頂部につけ、基部につぼがある。つばは白色、膜質、早落性、痕跡だけとなることが多い。つぼは白色、肉厚、大型、袋状(苞状)。ひだは密につき、離生、白色~淡紅褐色化する。肉は無味無臭、白色、傷つけると紅褐色に変色する。胞子紋は白色。胞子は無色、長さ7.5~12.5µm、幅5~7(8)µmの楕円形、平滑。菌糸はクランプなし。
フクロツルタケ
フクロツルタケ2
フクロツルタケ3
発生時期 夏~秋
大 き さ 中型 直径5~8㎝
栄養摂取 菌根菌
発生場所 針葉樹(マツ、モミ)、広葉樹(ブナ科)の樹林下の地上
分  布 日本、中国、ロシア、北アメリカ
食  毒 猛毒
撮  影 蒲郡市 16.7.27
フクロツルタケ傘3
フクロツルタケ傘
フクロツルタケ傘横
フクロツルタケひだ
フクロツルタケつぼ
 日本のフクロツルタケは傷をつけると紅褐色に変色する。北アメリカのAmanita volvata は触ったり古くなると帯褐色に変色するものであり、北アメリカ西部などの傷つけると赤色に変色するものとは別種とする見解もあり、やや異なる。中国のものは大きさなどが日本のものとよく似ている。北海道大学の今井三子(いまいさんし)博士の1938年北海道帝國大學農學部紀要のSTUDIES ON THE AGARICACEAE OF HOKKAIDO. IのSect. Volvatae中にフクロツルタケAmanitopsis agglutinata 、シロウロコツルタケAmanita clarisquamosa、アクイロウロコツルタケAmanita avellaneosquamosa の3種が解説されている。シロウロコツルタケはフクロツルタケやアクイロウロコツルタケによく似て、アクイロウロコツルタケに比べ、傘の条線が短く、ひだが密につき、胞子が大きい。フクロツルタケの子実体は傷つけると赤褐色になり、子実下層は3~4細胞層からなり、やや胞子が小さい。さらに、つぼ残片の内層が疎に配置された広紡錘形~楕円形に膨らんだ多くの細胞からなる。
 ● フクロツルタケ Amanitopsis agglutinata (Berk. et M.A. Curtis) Sacc.≡Amanita agglutinata (Berk. et M.A. Curtis) Murrill =Amanitopsis volvata Sacc. (白托柄菇)=Amanita volvata (Peck) Lloyd(片鳞托柄菇)
 日本(北海道、本州)、中国、ヨーロッパ、北アメリカに分布する。赤色を帯びて変色性あり。
 単生~散生。有毒。傘は幅2~8㎝、半球形~扁平、表面は鈍い白色~帯黄色、まれに中央が赤褐色になり、帯白色~帯褐色~赤色の粉状又は密綿毛状鱗片がまき散らされ、ときにつぼの破片の大きなパッチがつく。傘肉は柔らかく、白色~淡クリーム色、乾いたり傷つくとバラ色になり、無味無臭。ひだは離生、密につき、幅が広く、白色、乾いたり傷つくとバラ色~帯褐色になる。柄は長さ6~14㎝、幅5~10㎜、上下同径~先細り、基部は太くならず、髄状~中実、表面は白色に、小さな白色~帯褐色~帯赤色の鱗片やパッチに覆われる。つぼは大きく、ゆったりし、永存性、硬く、白色~帯褐色、分裂することもある。胞子はまとまると白色、楕円状、平滑、長さ8~11µm、幅5~6µm(北大紀要から)。
 ●シロウロコツルタケAmanita clarisquamosa (显鳞鹅膏) 日本、中国に分布する、傘の条線が短く、変色性はほぼ無い。
 子実体は普通、中型。傘は直径4~10㎝、饅頭形~扁平、汚白色~黄褐色~褐色、縁に縁片膜があり、短い条線があり、褐色~灰褐色のパッチのようなつぼの残片がある。傘肉は白色、変色性は無いかわずかにある程度。ひだは離生、密につき、白色~クリーム色、乾くと灰色~灰褐色~チョコレート褐色に変わり、短ひだは切形、種々の長さになる。柄は長さ6~13(6~10)㎝、幅1~2㎝、近円筒形~逆棍棒形、表面は白色~汚白色、灰褐色のぬか状~密綿毛状の小鱗片で覆われる。柄の基部は膨れず、球状にならない。つぼは袋状、外面は白色~汚白色、内面は汚白色。つばは上部につき、早落性。胞子は長さ(9.5)10~13.5 (14.0)µm、幅(5.5)6~7µmの楕円形~長楕円形、アミロイド。坦子器にクランプは無い。
 ○シロウロコツルタケ(北大紀要の解説から)単生~散生。有毒の疑いあり。傘は幅4~6㎝、表面が乾き、鈍い白色~帯黄~帯褐色~淡ピンク色を帯びたシナモン色~赤ワインを帯びたシナモン色、中央まで絹繊維状、縁は白色、わずかに条線があり、大きな繊維状の鱗片に覆われ、その鱗片の色はバフピンク色(ごく淡いピンクがかった黄褐色)又はタマネギの皮のピンク色。傘肉は帯白色~帯ピンク色、肉質、無味無臭。ひだは離生、白色、密につき、後側は円く、幅は広く、前側がより広く、片側が膨れる。柄は長さ6~10㎝、幅8~12㎜、上部がわずかに細く、帯白色~帯褐色、粉状~繊維状の鱗片に密に覆われ、つぼの上は毛深い。その鱗片の色はバフピンク色~コンゴピンク色、髄状~中実。つぼは大きく、膜質、高さ4.5㎝、幅2.5㎝以下、永存性、硬い又は柔らかい、柄の基部を鞘状に包み、長さの約3/4が離れ、先が分裂し、帯褐色~帯白色。胞子はまとまると白色。胞子は無色、長楕円形~円筒形、長さ10~15µm、幅5~6µm、平滑、顆粒を含む。
 ●アクイロウロコツルタケAmanita avellaneosquamosa (雀斑鱗鵝膏菌.) 日本、中国に分布する。条線が長く、変色性なし。
 子実体は小型~中型。傘は直径4~8㎝、饅頭形~中凸扁平、白色~汚白色、縁に放射状の線があり(傘の半径の15~30%の長さ)、若い段階には縁片膜がある。傘上のつぼの残片は褐色のパッチのようなフェルト状、厚さ2㎜以下である。下地は白色、ひだの色と変わらない。ひだは離生、密につき、新鮮なときは白色~クリーム色、しばしば乾くと灰色~灰褐色~チョコレート褐色になる。短ひだは四角に切り払われる。柄は長さ7~12㎝、類円柱形~やや逆棍棒形、柄の頂部がわずかに膨れ、幅は8(先)~20(基部)㎜、表面は白色~帯白色、白色の粉状の鱗片をつける。柄の基部は球根状にならず、つぼがつく。つぼは袋状、膜質、フィルム状、縁は離れ、高さ2~4㎝。つぼの外面は汚白色、内面は白色。つばは壊れやすく、簡単にくずれ落ち、柄の上部に粉状の小鱗片だけが見えることも多い。肉は無臭、白色、変色しない。胞子は ZLYのデータによれば長さ(8.0) 9.0~11.0 (12.0)µm、幅 5.5~6.5(7.0)µm、惰円形~長楕円形(少数が広惰円形~円筒形)、アミロイド。坦子器にクランプ無し。 マツ、モミ、ブナ、クリの樹林下に発生する。
 ○アクイロウロコツルタケ(北大紀要の解説から)単生~散生。有毒の疑いあり。傘は幅5~10㎝、饅頭形~扁平、中央で窪まず、表面は乾き、淡ピンク色を帯びたバフ色~aveHaneous色、取れやすい鱗片に覆われ、鱗片が中央では密につき、縁に条線がある傘肉は白色、肉質、無味、無臭。ひだは白色、後に黄色を帯び、離生~隔性、縁はわずかに波打つ、普通密につき、前部が広く、片側が膨れる。柄は長さ9~17㎝、幅6~20㎜、上下同形~上部が細まり、鱗状、ほぼ同色かわずかに淡色の粉状の密綿毛があり、中空~髄状。つぼ膜質、大きく、柄の基部を鞘状に包み、長さの約2/3が離れ、長さ5㎝、幅4㎝以下、白色~鈍いピンク色を帯び、永存性。胞子はまとまると白色。胞子は無色、長さ9~10.5µm、幅 5~6µm、楕円状。

 Amanita volvata は北アメリカ東部を基準産地とし、テングタケ属AmanitaはStudies in the AmanitaceaeのDr. Cornelisメモリアルサイトに詳しく公開されている。Amanita volvataはDr. KuoのMushroomExpert.Comによる。
 ●北アメリカのフクロツルタケAmanita volvata
 傘は直径3.5~6㎝、 饅頭形~平凸形又は扁平、乾き、白色~全体に褐色を帯び、白色を帯びた柔らかいパッチをランダムにつける。パッチは古くなるとわずかに褐色を帯びる。傘の縁に条線はないか、又はわずかにある。ひだはほぼ離生、密につき、白色~乳白色、短ひだが多い。柄は長さ4~9㎝、幅0.5~1㎝、やや逆棍棒形、白色を帯び、触ったり、古くなると褐色を帯び、わずかに毛があり、つばを欠く。柄の基部は白色の厚い鞘状のつぼに包まれ、つぼは古くなると褐色を帯びる。肉は白色、露出しても変色しない。肉は無臭。傘表面のKOH反応は(-)。胞子紋は白色。胞子は長さ7~10µm、幅4.5~7µmの楕円形、平滑、アミロイド。坦子器は4胞子性、クランプなし。傘の表面にわずかにゼラチン化した3~9µm皮層がある。(by MushroomExpert.Com)
 胞子は長さ(5.8) 8.4~12.2(14.2)µm、幅 (4.5) 5.2~7.2(9.0)µm惰円形~長楕円形(少数が広惰円形~円筒形)ともいわれる。Amanita volvataは北アメリカ東部に見られるものである。南カリフォルニアに見られるものはAmanita fallax の仮名があてられている。東部のAmanita volvataは大きめ、頑強な種であり、柄の上部に密に綿毛があり、ほぼ球形~広楕円形の袋状のつぼがある。同じ地域に、記述のあるもの(Amanita. peckiana Kauffman, Amanitopsis volvata var. elongata Peck)や記述のないAmanita属のかなりの種がある。話題になることの多い、Amanita sp. 41 とAmanita sp. 50の2種があり、観察図鑑にAmanitopsis volvata として記述されていることの多いのはかなり小さい種のAmanita sp. 41である。(by Studies in the Amanitaceae)
 北アメリカのフクロツルタケから次の2種が分けられ、仮名がつけられている。この2種は傷つくと赤色を帯びる。
 ●Amanita fallax Tulloss et G. Wright(仮):北アメリカの西部(南カリフォルニア)に分布する、ずんぐりし、表面が褐色になり、条線はほとんどない。 
 傘は直径3~11㎝、初期に半球形~広饅頭形~平凸形、白色、古くなると淡ワイン色~シナモン褐色になり、湿時、弱粘性~粘性があり、条線はない(古くなるとわずかにある)。つぼはあり、いくつかの大きな破片となることもあり、白色~灰黄色~淡褐ワイン色。肉は白色、硬く、傷をつけるとピンク色~ローズワイン色~褐色を帯びたローズ色になる。しばしばすぐに色あせるが、古い傷は褐色を帯びる。ひだは上生(narrowly attached)、波打ち、密につき、白色~淡オレンジ白色、傷つくとピンク色になり、その後褐色に変わる。ひだの縁は細かい毛状で、古くなると褐色を帯びる。短ひだは切形~ほぼ切形。柄は長さ3~13.5㎝、幅0.8~3.4㎝、白色、古くなるとシナモン褐色になり、円筒形、細かい、白色~褐色の密綿毛が特に上部の1/4につき、下部は繊維状、つばは無いか又は頂部~上部に脱落しやすい黄白色のひだの輪をつける。茎の基部は丸く、つぼは白色、筒状、中空~中実。臭いは芳香~菌臭~アンモニア臭。味は初め温和、すぐに苦味やせっけんのような味になる。胞子は長さ (7.2) 9.4~14.5(20.8)µm、幅(4.9) 5.6~8.0(12.2)µmの楕円形~長楕円形~円筒形、アミロイド。坦子器にクランプはない。
 ●Amanita pseudovolvata Tulloss(仮) :北アメリカ東部に分布し、小型で条線が見え、縁に繊維状の小さい破片が残る。
 傘は直径1.5~6.8(9.9)㎝、類球形~半球形、饅頭形(しばしば円錐状)~平凸形~浅皿状、初期に粘性があり、やがて光沢が出てくる。傘は柄の部分で厚さ0.5~5(7.5)㎜。色は汚クリーム色~くすんだ白色~白色、中央部は濃色になり、傷つけるとかすかなピンク色~ピンク褐色~くすんだピンク色になる。傘の縁は成熟すると短い条線が現れ、つぼから出てくるときにすでに条線が見えることも多い。傘の縁は白色の繊維状の小さな破片がつき、赤褐色~レンガ色~粘土色になる。傘に残るつぼ(外被膜)の残片は(1)薄い、破れた膜~フェルト状~放射状の繊維層 (つぼの内層) 、 (2)単に放射状の繊維と縁側で小さくなる簡単に落ちる鱗片。残片は初め白色、すぐに赤褐色~レンガ色に変わり、やがて乾いて淡ピンク色を帯びたベージュ色になる。ときにはつぼの完全な破片がつぼの内層と同じように傘上に残ることがある。全体に白色~くすんだ白色~淡クリム色~クリーム色であり、側面からは白色~くすんだ白色見え、傘や傘の上のつぼの残片の色が見える。傘の縁は白色の綿毛がつき、赤褐色~レンガ色になる。ひだは離生~上生、ときに沿下することがある。短ひだは切形~ほぼ切形~丸い切形~やや細くなる。柄はつばが無く、長さ2.2~9(11.6)㎝、幅2.5~8.5㎜、白色~かすかにクリーム色~くすんだ淡クリーム色、古い傷は赤褐色~レンガ色のあざになり、白色の粉状~密綿毛がつき、さわったり、古くなると赤褐色~レンガ色にまる。柄は円筒形~上部が細くなり、中空、ときに黄色やおがくずのような詰め物がある髄状、基部の肥大はない。袋状のつぼは類球形~卵形(時々、片側に突き出る)、長さ 13~37㎜、幅7~22㎜、白色、柔らかくて強い革質、普通、2~3裂し、層状(傘の上に内層が残る)。湿った時以外は無臭、臭いはかすかな菌臭又は洗濯もののような臭いがあり、無味。胞子は長さ (5.0) 8.0~11.0 (13.5)µm、幅 (3.8) 4.5~6.0 (7.8)µmの楕円形~長楕円形~円筒形、アミロイド。坦子器にクランプはない。
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